◆ AutoCADでの地層地質縦断図作成方法
- 前ページのビューポート内処理をフル活用し、煩雑な前作業と細かな作業を繰り返せば、複雑で長尺の地層地質縦断図を作成することが可能となります。
- 基本的には、1)モデル空間上に想定ビューポート枠を連続的に設定、2)ペーパー空間でポリラインビューポートを設定してZ軸回転の後に1)の想定ビューポート枠にスナップする、3)2)の作業を繰り返す、4)3)で作成した複数のビューポートを見掛け一連の平面図のように連結します。断面図もほぼ似た操作で、ビューポート枠を連結配置します。
◆ 地層地質縦断図の全体図とその局部拡大図
- 下図上段が地層地質縦断図の全体図ですが、A2版長尺で高さ・幅42cm、長さ5.3mあります。
- この図面DWGファイルのサイズが75MBと大きい上に、多数のビューポートを配置していることから、編集作業や画面の再描画にマシンパワーを要します。64ビットOS環境にメインメモリは8GB以上は必須です。因みに32ビット版AutoCADLT版では、ファイルの読み込み途中でフリーズします。
◆ 地層地質縦断図のモデル空間全データの配置
- 下図がモデル空間全体の全データ配置状況です。断面図は正対させて平面図下部に配置しています。平面図の縮尺は1/1000、断面図の縮尺は横1/1000、縦1/200です。
- 平面図は任意の方向に配置できます。両者が重なり合わなければどんな方向でも構いませんが、複数の成果平面図を集成することになるので、路線全体が断面図方向と調和的な方がスクロールの手間も少なくて良いでしょう。
◆ モデル空間の地質平面図上にビューポート枠を配置
- A1版あるいはA0版の大判複数枚(今回の場合にはA0版13枚)の地質平面図を連結配置して長い区間の集成成果図面にする必要があります。その作業には各葉毎にDWG参照組込で連結し、位置・方向が精度良く接合できたなら、組込ファイルをバインド(挿入)します。バインドした図面はブロック参照図形となっていますので、これを分解しておきます。DWG参照する組込をする前に、画層名やその設定情報をできるだけ統一しておくことはいうまでもありません。この前段での図面集成作業については、別稿に譲り、説明を割愛します。
- 地層地質縦断図を作成する際には、用紙の縦幅と長さを決定する必要があります。そのためには用紙縦幅の中に配置する断面図の幅と縮尺、地質平面図の幅と縮尺(断面図の横縮尺と同じ)を決定します。
- ここからがこの項の本題です。地質平面図の本線中心線沿いに、ビューポート枠を設定していきます。具体的なイメージは下図のとおりです。まず最初に路線沿いに中心線をポリラインで引きます。設計上の粁程中心線に沿う必要はありません。表示させたい領域のほぼ中央部を、ピンク色太線のとおりザックリとポリラインでなぞるイメージです。
- その後、中心線の両側にオフセットラインを所定の幅で引き、屈曲折れ点を見掛け上直線上にする際に生じる扇型の重複部と開口部を描き、下図の黄色太線のとおり、直線部1つずつ閉じたビューポート枠を設定します。
◆ ビューポート枠中心線描き方のポイント、後工程イメージ
- 路線計画は直線の他、円弧(単カーブ)やクロソイド曲線(緩和曲線)からなります。そうした区間にビューポート枠中心線を描くポイントが3点ほどあります。どれも似通っていますが、分かり易い漫画絵で補足説明します。
- 1点目のポイントは、上述したように表示させたい範囲の中心線付近をポイントすることです。路線沿いには進入路や付帯設備などが計画されている場合が多く、それらをビューポート枠に含めるためです。片幅でのオフセットラインを引いて、そのラインの内側に入ることを確認します。
- 2点目のポイントは、中心線ポリラインのクリック間隔です。計画路線の曲率が小さく、それに合わせて細かくクリックすると、ビューポート枠が縦長の短冊状になってしまいます。そこではクリック間隔の下限は、中心線から左右両幅の長さを目安にクリックすると良いでしょう。
- 3点目も上述しましたが少し細かいポイントです。計画路線に曲率がある場合、必ずしも中心線をクリックする必要は無いということです。円弧を疑似多角形と近似した場合に、内接状態ではなく中心線の少し外側をクリックするというわけです。
-
- 右図中段ではモデル空間での後工程の作業をイメージしています。ビューポート中心線での直線化を前提にオフセットラインを切り欠き、クリック点からの垂線を延ばして閉じたビューポート枠を設定しています。
- また下段はペーパー空間での作業イメージで、ビューポート中心線が直線になるように、ビューポート枠を回転しさらに連接しています。最終工程であるこの作業前準備が最も込みいった面倒で重要な作業です。改めた項で説明します。
-
-
-
◆ ペーパー空間ビューポート枠の作成・設定とその連結
- 最終成果となる地層地質縦断図のペーパー空間で、モデル空間で作成したビューポート枠毎にビューポートを作成していきます。最初と最後のビューポート枠は5角形、中間部は6角形のビューポート枠を設定します。
- 最初の起点部は既に設定済みの状態から始めます。下記作業を繰り返して、最初の項で説明した平面図が出来上がります。
- 1.先ずビューポート枠の予定幅・長さより大きめの6角形ポリゴンビューポートを作成します。
- 2.そのビューポート枠の中に入り、Z軸を回転させます。直前区間との相対角度(折れ曲がりの角度)を図画で正確に求め、それを入力する必要があります。回転角度の求め方は次項で詳説します。
- 3.次に、表示(V)、3Dビュー(3)、プランビュー(P)、現在のUCS(C)で、モデル空間の対象データ領域を正対表示させます。このときモデル空間の全データがビューポート枠内に表示されるので、対象領域が小さくなります。
- 4.窓ズームなどで領域を拡大させて対象領域を、ビューポート枠内にほぼ納まるように配置します。そしてビューポート枠コントロールの表示尺度に所定の尺度を設定します。
- 5.そして、下図のようにペーパー空間に配置したポリゴンビューポートの端点をモデル空間に配置したポリゴンビューポートの端点にスナップさせます。最後に、ビューポート中心線の折点を隣接ビューポートのそれに移動連結させます。
- 縦断図の接合に関しては各ビューポート枠の設定は、矩形の単一ビューポートの作成と、縦方向のシフトを考慮するだけです。Z軸回転を伴わないため比較的簡単ですので、説明は省略します。
◆ ペーパー空間新設ビューポート枠でのZ軸回転角度の求め方
- 先ず最初にコマンドラインで、システム変数UCSVP=0を設定します。新設したビューポート内では、直前に操作したビューポート内でのUCS設定を、新設ビューポートに引き継いでくれる設定です。デフォルトはUCSVP=1で、モデル空間での規定UCSで表示されます。
- 下図左側に直前ビューポートを配置しています。その右側にポリゴンビューポート枠を作成し、その枠内に入ります。何も表示されないので、ズームで全オブジェクトを表示させます。更に拡大して対象とするビューポート枠と直前作業の枠を表示させます。
- 新設枠内でX軸と底面方向とが一致しているビューポート枠が直前のもので、新設枠内でのモデル空間ビューポート設定枠の折れ曲がりの切り欠き角度を正確に求めます。その角度をZ軸回転角度とします。この図では時計回り方向ですので、CAD上では-方向の角度となります。そのままの値をZ軸回転角度として入力します。
- 求めるZ軸回転角度は、角度寸法記入コマンドを使用します。切り欠き部の双方をクリックして角度寸法を表示させ、寸法値を選択します。小数点以下の表示桁数は、一次的にでも最大の少数第8位まで表示させておくべきでしょう。
- プロパティの計測値(電卓マーク)から取得した値を、コピーします。この値を-Z軸回転角度として入力し、この設定状態でUCS座標系のプランビューを表示させると、正対したビューポート枠が設定・配置できます。