◆ AutoCADでの変倍図面作成法
- 地質調査の取りまとめでは、図面の高低差の割に延長が長い場合、断面図の縮尺が縦横で異なる場合がよくあります。高さ方向は1/200で、縦断方向は1/1000に、といった設定が最も一般的です。
- 専用の縦断図作成ソフトでは、地質情報の各オブジェクトを必要に応じて自動的に変倍してくれますが、AutoCADは汎用ソフトですのでそうはいきません。
- そこで、変倍したい情報とそうではない情報とを分け、変倍設定できるようにそれぞれブロック図形化します。ここが肝です。
◆ 変倍図面とブロック図形との関係
- 本項での説明は比較的簡単です。右図左側上段に配置した図面が、測量CADが変換出力した縦断図の成果です。縮尺は縦1/200、横1/500でした。この図面の断面図と測量諸元欄を含めた領域をブロック図形化します。
- その際、ブロック図形の挿入基点を正確に打ち込みます。標尺の基準になる点に正確にスナップさせます。
- そしてブロック図形表示尺度の内、横方向即ち尺度Xを2.5と打ち込むと、下段図面のとおり横長の1:1の自然斜面勾配での断面図が生成されます。
◆ 変倍図面内におけるブロック図形と非ブロック図形と取捨選択
- 上項の横方向に2.5倍したこの図面に直接の地質情報を書き込んで、最終成果とすることもあるでしょう。
- しかしながら1:1の自然斜面勾配の断面図を何枚も集成して、横方向に縮めた断面図を作成することもあります。例えば地層地質縦断図のような場合には、縦1/200、横1/1000の断面図を作成することになるので、ブロック化断面図の尺度Xは0.2と設定します。
- その中で横方向に1/5に縮んでしまっては全く困る情報があります。右図のとおり調査ボーリング結果がその代表でしょう。
- 変倍しない情報と、そうでない情報とを厳密に区別し、個別にブロック化しておきます。
- 図形情報毎にブロック化する際の挿入基点がポイントです。ボーリング柱状図では地盤標高と、図面上で旗上げの支柱との交点を基点としておくとよいでしょう。ボーリング柱状図がグループ化されている場合もあります、煩雑な図化作業をする前に、変倍可能なブロック図形化は必須です。
- 本項では主に変倍図面として断面図作成が主体となりますが、その作業そのものについては説明しません。ただし主要な作業である、文字列や多段マルチテキストの入力に関しては、変倍時に最も面倒な作業になるため、次項でその特徴をまとめて記します。
◆ 変倍図面作成時における細かな注意点、特に文字列・マルチテキスト
- 作成業者の異なる複数の断面図を接合集成する場合には、接合後に編集作業を伴います。また土工区間では断面図を縦横1:5で図化しても、トンネル区間は1:1で図化する場合も多いはずです。そうした変倍図面作成時における非常に面倒なオブジェクトが、文字やマルチテキストです。
- CAD上では文字の位置情報はブロック図形化により自動的に変倍されまが、文字の形まで変倍されてしまいます。そうした変形した文字やマルチテキストを元に戻すには、ブロック図形を分解して正常表示されるように個別に設定変更する必要があります。
- 横方向の尺度Xを1→2.5と設定した場合に、どのように変倍されるかを右図に示しています。右図下段の回転角0度の横書き文字では幅係数だけが2.5倍となり横太文字になります。ですが90度回転した上段の文字では、文字の高さが2.5倍、幅係数が1/2.5の0.4になっています。これらを元の図面のように高さ2.5、幅係数を1と設定すれば左側のように正常に表示されます。
- 元は45度回転させて傾斜した文字列の場合はさらに複雑です。高さ、回転角度、幅係数、傾斜角度のいずれも複雑な値となっています。特に傾斜角度は、イタリック体を表示させるためであり、右回りに360度設定可能です。0度設定で傾斜したまま直立の字体となります。これらの内回転角度を除き、元の高さ2.5幅係数1と設定すると正常に表示されます。
- 最後はマルチテキストについてです。マルチテキストがそのままブロック化されて下図のとおり変倍されたとします。それを編集しようと分解すると、マルチテキストは、複数の文字列に分解されてしまいます。回転されて傾斜している場合も同様です。
- こうした複雑な文字列やマルチテキストに関しては、幅の小さな断面図の方で内容的に完成させておき、それらの文字情報を除外して図形オブジェクト主体でブロック化し、変倍後に手作業で転写するのが現実的な対応ではないでしょうか。
◆ AutoCAD編集作業の最後に、「クィック選択」を!
- 最後に一言。これまでに多種多様な図面を編集(加筆・集成)作業をする際、特に必須の図形ハンドリング方法を取得して頂きたい。それはクィック選択です。
- 電子納品共通仕様で最低限の仕様が決まっていても、各社で微妙に異なる図面が作成されてくるのは必至です。それらを最低限の仕様に合わせて図形を選択して画層レイヤーの変更設定や着色などの属性設定を行う必要があります。そのためには多数、というより無数のオブジェクトの中から、選択的に図形をハンドリングすることが必要となり、そのための機能が前述のクィック選択です。
- クィック選択はオブジェクトのプロパティパレットの右上にアイコンボタンが配置されています。
- このクィック選択を駆使すれば、どんな複雑で込み入った図面でも目的のオブジェクトをハンドリングできるので、怖いものなしでしょう。