◆ AutoCADのビューポート内処理
- AutoCADには原寸大でデータ群を配置できる仮想半無限のモデル空間と、データ群をある縮率調整して表示させるリアルなペーパー空間とがあります。ペーパー空間は印刷イメージそのままであると考えてよいでしょう。
- ペーパー空間にはモデル空間を表示させるのぞき窓のようなビューポートを複数設置できます。その中の表示尺度や見え方の方向等を任意に設定することが可能です。またデータ群をその種別毎に画層に分けておけば、ビューポート内で画層毎の表示・非表示の切替が可能となり、目的別の複雑な図面の作成も可能となります。
- このビューポート内処理を使いこなすには、Z軸を中心とする回転と、座標系(WCS、UCS)を理解しておく必要があります。
◆ 測量CADデータの把握
- 先ず測量CADデータが、どのような配置・縮率で変換出力されているかを把握する必要があります。
- ただしほとんどの場合、縮尺1/500、A1版定型横向き、の印刷実寸イメージで出力されていると想定されますので、本項での説明は回避して構いません。直ぐにモデル空間に成果を加筆していって下さい。
- 印刷実寸イメージで出力されていることを確認するには、図面の右上端にマウスカーソルをスナップさせ、その時に表示されるXYの座標値を確認して下さい。A1横定型サイズであれば右図のように、X,Y=(841,597)と表示されます。因みにA0版横定型だと X,Y=(1189,841)です。
◆ 平面直角公共座標系に配置された測量CADデータの場合
- 機会は少ないと思いますが、右図のような配置の測量データの場合があります。特徴は、方位が北で図面の上部を向いており、さらに座標軸交点のXY座標が50間隔(50m)となっていることです。
- ここでは、前ページJGD2000測量図の第4象限データを示す座標データ、X,Y=(-39600,-125150)が表示されていることが確認できます。
- 扱いにくそうな測量データですが、GPSログデータの変換した軌跡データを直接図面上に落とし込むことができる点が、最大のメリットでしょう。
- 次項での操作に移る前に、測量CAD図面の底面方向とCAD内のX軸(水平線)との角度を正確に確認しておきます。寸法(N)、角度寸法記入(A)コマンドを実行し、その時の計測値をクリップボードに記憶させておきましょう。ここでは110゚でした。
- 以上が本項での前置きです。
◆ モデル空間に配置された測量CADデータをペーパー空間に表示
- モデル空間からペーパー空間へ、あるいはレイアウトを新規作成すると、A4版横向きのペーパー空間にビューポートが1つ作成されています。そのビューポート内には右図のとおり、モデル空間の全データが表示されているはずです。
- 仮に何も表示されていない場合には、以下のようにします。
- ビューポート内に入り(ビューポート内の任意の点をダブルクリック)、ズーム(Z)でオブジェクト範囲(E)を実行すると、全データが表示されます。
- それでも何も表示されない、あるいは極端に小さく表示される場合があります。その理由は測量CADが変換出力する際に、測量データをブロック化しその時の挿入基点を測量原点x,y=(0,0)として吐き出すためです。測量データとそのブロック挿入基点も、データ範囲として扱われるために、そうした表示になります。
- 対処方法としては、測量原点が挿入基点となっているブロック図形を分解する必要があります。図面全体のブロック図形を選択して、分解を実行します。ブロック図形が多い場合には、図面内の小さな部品まで測量原点を挿入基点にしていることはないと思いますので、クィック選択でブロック参照図形をすべてハンドリングし、一気に分解してしまっても構わないでしょう。測量図面内にデータが納まっていれば、測量図面全体がビューポート内に表示されるはずです。ペーパー空間の設定については、説明を割愛します。
◆ ペーパー空間ビューポート内の測量CADデータの回転
- 標題の言葉とおりビューポート内で測量CADデータを回転するわけではありません。ビューポート内領域をダブルクリックします。そうすれば、右図Aのようにモデル空間にワープします。
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- モデル空間内でZ軸を中心にして3次元座標系を見掛け上回転します。回転角度は前々項で記録させておいた110゜です。
- 実行するコマンドは、ツール(T)、UCS(W)、Z軸回転(Z)、回転角度をコマンドラインに入力、ここでは110と。そうすると右図Bのように、ビューポート内の座標軸が110゜反時計回りに回転されます。
- この操作はビューポート内のモデル空間に、独自のユーザ座標系を設定したとを意味します。
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- ビューポート内を、見易い設定になるよう図面の底面方向をX軸右方向に正対させる必要があります。
- 実行するコマンドは、表示(V)、3Dビュー(3)、プランビュー(P)、現在のUCS(C)です。その結果右図Cのように、図面全体が印刷イメージと同じ向きに表示されます。
- この操作はビューポート内のモデル空間を、独自のユーザ座標系でプランビューを表示させたことを意味します。
- 以後の印刷レイアウトや、ビューポート内の表示縮尺の設定等については、説明を割愛します。
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